明日発売の新刊レビュー
ヒーローになったつもりが人殺し『ヴァルガビンゴ』亜画々屋ぺらも
根本和佳
ヒーローの裏でも陰でもない、「よどみ」への誘い
「good!アフタヌーン」で連載中の亜画々屋ぺらも氏による『ヴァルガビンゴ』の単行本第1巻が、12月7日に発売される。
これは、たいへん“居心地の悪い”作品である。
ひとたび力をふるえば、人が死ぬ
悪の怪人が、人々の暮らしをおびやかす日本。
伝説のヒーロー・メガリスに憧れる小学生の織井蓮悟は突然、ヒーローへの変身能力を与えられる。
しかしその力は強大で、単なるチンピラをちょっと懲らしめるつもりが、惨殺してしまう……
その後、蓮悟の憧れである老戦士・メガリスが、ヒーローからの引退を表明。その理由には、蓮悟の覚醒も関連しているようだ。
さらに怪人のひとりが蓮悟のクラスメイトの杉下智恵を襲う。助けに入った蓮悟だが、敵であり悪人であるはずの怪人から、変身のコツや戦い方を伝授されるのだった。これはいったい…?
悪酔いしそうな“居心地の悪さ”から離れられない
『ヴァルガビンゴ』は緻密な描き込みとアクションに支えられ、入り組んだ設定をも読ませる力を持った作品だ。ヒーローコミックというワインにたまった澱(おり)のような、よどんだ魅力にあふれている。
強すぎる力を持て余す少年、現代のヒーロー事情、怪人たちの思惑、巻き込まれて死ぬ人間、そして社会が抱える問題……次から次へと重なり合う居心地の悪い要素は、全体からすればまだミルクレープの2枚目をめくった程度だろう(余談だが、ワインとミルクレープは意外と合う)。
ヒーローたる蓮悟は誰かを救うのか。蓮悟自身は救われるのか。
この作品が描くヒーロー像は、翌日まで酔いが抜けないワインのように、モヤモヤと胸に残るはずだ。
講談社 (2016-12-07)
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©亜画々屋ぺらも/講談社