明日発売の新刊レビュー
山本アリフレッド『理系が恋に落ちたので証明してみた。』頭よすぎるバカップルは手に負えない
根本和佳
“好き”に証拠を求める、才能の無駄使い系実験ラブコメ
理系女子と理系男子が恋に落ちたら……?
山本アリフレッド氏による“理ア充”ラブコメ『理系が恋に落ちたので証明してみた。』の単行本第1巻が、11月12日に発売される。
かつてこれほど“理系”なバカップルがいただろうか
国立大学で理工学を専攻する、大学院1年の雪村と氷室。
頭脳明晰かつ研究熱心な美男美女……なのだが、こいつらめんどくさい! 互いに惹かれ合っているものの、壁ドン、顎クイなどの実験を繰り返して、“好き”という感情が定量的に証明されるまで、その恋心を認めないのだ!
客観的な証拠を集めて判定してこそ理系……ってアホか! いや頭よすぎか!
壁ドン、顎クイに始まり、袖クル、頭なでなで、さらなる密着。2人はさまざまな実験を重ね、重ねすぎるほど重ね、現われてくる数値で“好き”を証明しようとする。
この実験、密室ではなく人前でやってるので、たいへん健全である。本人たちもやってて恥ずかしいのだが、あくまで証明のための実験である。
……なんかこれ、逆にドキドキしますね? もっといろいろな実験もしていかなきゃね?
頭でっかちな“理ア充”に感じるパトスを証明せよ
この状況、はたで見ている後輩(と読者)のほうが、よっぽど恥ずかしい。
うっかり「爆発しろ」なんてツッコもうものなら「理由なき爆発はありえない」「その爆発は、どの物質が反応して起こるものだ?」などと返されるに違いない。
いいえ、君たち自身が爆発を続ける永久機関です。
彼らを見て感じるパトス、これはなんだ。
一般的には、隠していたものがあらわになると、ドキドキが生まれる。
そして「いいぞもっとやれ」「もっと見せろ」という感情に結びつく。
だが彼らを見ていると、“好き”という気持ちがあるのにそれをゼロベースで証明しようとする、言うなれば「いったん全裸になってから理論の服で武装していく」姿に、新しいドキドキを感じてしまうのだ。
「いいぞもっと着ろ」「もっと隠してみろ」ーーその服、スッケスケだけどな!
ほるぷ出版 (2016-11-12)
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©山本アリフレッド/COMICメテオ
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