明日発売の新刊レビュー
ヤンデレの愛が重くてツラい 『鳶田くんと須藤さん』理央
籠生堅太
イケメンヤンデレとの、微笑ましく狂った日常
秋田書店のWEBコミックサイト・Champion タップ!で連載中の『鳶田くんと須藤さん』第1巻が、明日9月8日に発売される。
ヤンデレの能力が高する
異常なまでに嫉妬深くて、やることだいたい犯罪なヤンデレ・鳶田くんと、彼の重たすぎる愛にドン引きしつつもたまにときめいてしまうツンデレ・須藤さんの、ギリギリのラブストーリーが『鳶田くんと須藤さん』。
とにかく鳶田くんの愛が深すぎてやばい。合鍵作って部屋に無断侵入してくるわ、盗聴器は仕掛けるは、スマホ盗んでプライベート覗きみるわ。それ、全部法に触れてますから!
イケメンなうえ、各種ポテンシャルが異様に高い鳶田くんの行き過ぎた愛情表現は、だんだんとクセになってくる。「才能の無駄遣い」というか、ものすごく優秀な人が、全力でしょうもないこと(に他人からは見える、本人にとっては死ぬほど大事なこと)にとりくむ様子は、謎の感動を呼ぶのだ。
そんな歩く事案・鳶田くん。けれど暴力をふるうなど直接、須藤さんに危害を加えるようなことは決してしない。むしろボディーガードのように、彼女を守ってくれることさえある。だからこそ須藤さんもうんざりしながらも、鳶田くんとの時間をすごすことができるのだ。
長い時間をいっしょにすごせば、鳶田くんのやさしい一面が垣間見えたり、病気で弱った彼の姿にときめいたりもするわけで。
そうやって突然現れたヤンデレに、少しずつ心を許していく須藤さん。2人の関係は、だんだんと相互依存のような形へと変化していく。
本当に壊れているのは誰?
ここにきて“ヤンデレに付きまとわれる一般人”だったはずの須藤さんについて、ひとつの疑問が湧き上がる。
実は彼女も、どこか壊れた人間なんじゃないのか?
ある日、目の前に表れて「俺が彼氏になってあげようか?」なんて言うストーカー男を、いやいやながらも側に置き、だんだんと依存していってしまう須藤さん。鳶田くんの異常性が目立つばかりに、気にもならなかったけれど、彼女も彼女でどこかおかしい。
もうひとつ気になる点として、なぜ鳶田くんは須藤さんにこれほどまでに執着するのか。“11年前の交通事故”というキーワードはたびたび登場しているが、いまだ詳細は語られていない。
鳶田くんという変態イケメンの生態を楽しく眺めていたはずが、気づけば心に傷を持つものたちの物語に引きこまれていた。そんな気軽に読めて、夢中になれる、漫画の楽しさをギュッと集めたような『鳶田くんと須藤さん』。
著者の理央氏は、『鳶田くんと須藤さん』と平行して「Champion タップ!」で『絶望男子と中国娘』という作品をダブル連載中。どちらも同じ世界観のなかで描かれた物語ということなので、『鳶田くんと須藤さん』が気になった方は、ぜひとも『絶望男子と中国娘』もチェックを!
秋田書店 (2016-09-08)
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©︎理央(Championタップ!)