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殺してやる。殺してほしい。「人外×少女」の復讐劇『ライラと死にたがりの獣』原作:斯波浅人 作画:斉田えじわ

塩田桂介

希望に向かう復讐劇

人ならざるモノとして不当な差別を受ける「亜人」。彼らの中には、殺しの道具として人間に飼われている者もいた。
本作の主人公もそんな亜人のひとり。

ターゲットであるはずの少女に「青い瞳の天使」の面影を見るアーロン

原作・斯波浅人氏、作画・斉田えじわ氏の新人コンビが「ヤングエース」で連載中の真っ白な毛皮を持つ亜人の暗殺者・アーロンと、彼に親を殺されたライラが織りなす、愛憎入り混じる復讐劇『ライラと死にたがりの獣』第1巻が、明日4月4日に発売される。

何も知らない悪魔と青い瞳の天使の邂逅

母と祝う、貧しいながらもささやかな誕生日。幸せなはずのライラの笑顔は憎悪に歪むことになる。アーロンに両親を殺されてしまったのだ。

これだけならば、よくある復讐劇になりそうなものだが、両親の仇が殺すことしか知らず、命の意味すら知らない赤子のような存在だと知ってしまったらどうだろう? 憎悪に身を任せて仇討ちができるだろうか。

憎い仇に、幸せにしてほしいと頼まれたライラの心中は……

命じられるまま、なんの疑問も抱かずに殺しを続けてきたアーロン。そんな彼が初めて自分の意思で主人の命令に背き、標的であるはずのライラを殺さないという選択をした。
アーロンはライラを「青い瞳の天使」と呼び、信じられない“お願い”をする。

「ぼくを殺して てんごくにつれてって」

これまでの贖罪としてではなく、ただ殺してもらいたいという願望。ライラは、予想もしない事態に憎しみを発露できない。
そうして歪んだ想いを絡ませながらふたりの逃避行が始まる。

罪の所在はどこに?

物語の鍵は2つある。

ひとつは「絵本」だ。
アーロンの飼い主は、彼に一冊の絵本を持つことだけを許した。日の光も届かぬ地下室、話し相手もいないアーロンにとっては、絵本が世界の全てだった。
その内容は「疲れ果てた少年が青い瞳の天使に連れられ天国に向かう」というもの。

アーロンが、ライラを青い瞳の天使と呼び、自らを殺してほしいと願った理由はここにある。
アーロンは盲目的に絵本の内容を信じている。絵本と現実の違いを判断する知識さえも与えられていない、その事実が恐ろしくもあり憐れでもある。

アーロンに対する刺客の言葉に絶句するライラ

ふたつ目は「差別」。
亜人たちは、人間によって教育や医療すらままならない暮らしを強いられている。
ライラが出会った亜人たちのなかには、人間に対してどこか卑屈な態度を見せるものもいた。かつては労働力として、亜人が人間に攫われていたという事実もある。
両種族の間の溝は深いものだ。

殺ししか知らないアーロンに恐怖を覚えつつ、彼を生み出したのが自分と同じ人間だという現実を知ってしまったライラは、葛藤の末にある答えを出すのだが……。

復讐の形はひとつではない。過去と未来への復讐

アーロンに人の痛み、苦しみを理解させ、人らしい生き方を教えるというライラの導き出した結論。
それは復讐劇という言葉が持つ暗いイメージからは遠く、「復讐の後には何も残らない」という使い古された先入観を吹き飛ばしてくれた。
彼女の選択は、確かに困難な道だろう。しかし、これこそが彼女自身が受けた理不尽への復讐なのだ。

ライラは涙を湛えながらもアーロンをヒトにしようと決意する

ライラは復讐を誓いつつも、親の仇であるアーロンの過去を憐れみ、彼の未来を憂うという前向きさを見せてくれる。持ち前のポジティブさと、一時の感情に流されない強い心を持つライラの存在が、殺伐とした世界観に対して希望を持たせてくれるのだ。

これは、希望に向かう「復讐劇」だ。



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©Asato KONAMI 2017 / KADOKAWA
©Eziwa SAITA 2017 / KADOKAWA