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書店インタビュー

お客様が知らない世界にナビゲートしたい。 COMIC ZIN塚本さんのおすすめ作品

籠生堅太

漫画は何人もの人の手を経て、読者のもとに届く。そんな漫画業界の中で、唯一読者と直にやりとりをする存在が書店員だ。月1,000点という膨大な数の新刊が、どのような動きを見せ、読者からどのような反応をえているのか。“漫画の今”を一番近くで感じているのは、書店員ではないだろうか。

そんな書店員さんのおすすめする新人漫画家が知りたい!

今回、伺ったのはCOMIC ZIN 秋葉原店

中央通りに面するCOMIC ZIN。1Fのショーウィンドウは、いつも力作。取材に訪れたタイミングでは『ダンジョン飯』3巻がディスプレイされていた

COMIC ZIN秋葉原店は、2009年にオープンした比較的新しい漫画専門書店。一般流通している漫画作品だけではなく、同人誌も扱っている。今回お話を伺ったバイヤーの塚本さんをはじめ、従業員のみなさんは超がつくほどの漫画好き。漫画家、編集者など漫画の作り手からも愛される書店だ。

COMIC ZINの塚本浩司氏。最近読んだ面白かった作品は、櫻井しゅしゅしゅ先生の『ラブコメのバカ』とのこと

お話を伺った塚本氏は、ニコニコ生放送を使い、ただサインを入れる様子を配信するのではなく、作者と読者がコミュニケーションをとれる部分までを再現した“WEBサイン会”など新しい試みを次々を企画し、読者を楽しませている。その行動力には驚かされるばかりだ。そんな塚本さんが今注目する新人の作品とは?

COMIC ZIN 塚本さんオススメの3冊

『さわらせてっ!あみかさん』トフ子

いつも穏やかなあみかさんは、心も体も大きいほがらか女子。そんな彼女と彼女のおニクに夢中な周囲の人々の姿を描いたほんわか4コマ

塚本さん
「なんでこの作者さん、こんなに俺の好きなこと知ってるんだ!?」と思うくらい、読むたびに楽しいと同じぐらいに恥ずかしくなる作品です(笑)。

“ぽちゃ漫画”って言われるぷにぷにした女の子が登場する漫画は増えてきたと思いますが、この作品はぷにぷにした主人公・あみかさん自身もかわいくて魅力的なんですが、彼女のお肉の仕草に惹かれて、本能のままにそのお肉を愛でようとする妹や友達、後輩の様子がわかりすぎるぐらい共感できて、自分の性癖を暴かれているようで恥ずかしくなります(笑)。

びっくりするぐらい自分好みの作品、“趣向”が偏った作品と言っていいかもしれませんが、絶対にわかってもらえる人はいると思っています。この作品が売れることでもっと同じ“趣向”の作品が出てくるといいなって思っています。

『オンナノコガレ!』川床たろ

野球好きの少女・塁は、オシャレが苦手な女の子。そんな彼女が初めての美容室で出会ったのは、オネエの美容師・シノブ。彼女との出会いで、どんどんオシャレに目覚めていく塁の姿が眩しい

塚本さん
友達になりたいキャラがいる作品が好きです。好きな作品について聞かれた時、自分がいつも答えていることです。
この作品はそんなキャラが登場する作品なので、読んでいてすごく心地よかったですね。

“ぼくっ子”ヒロインが元々大好きなので、主人公である塁の活発さ(しかも野球好き!)も魅力ですが、その彼女をオンナノコとして変えていく、もうひとりの主人公・シノブさん、オネエである“彼女”の持つ包容力、暖かさが読んでいてすごく気持ちよく、こんな人たちと友達だと楽しいだろうなって思わされます。

『オンナノコガレ!』が連載されている「COMIC it」はジャンルで分けると女性向けの雑誌のため、創刊当初は連載作品については不勉強だったのですが、編集さんから紹介されて読んでみるとこの『オンナノコガレ』はじめ、『さらば佳き日』など男性が読んでも魅力的な作品が多く、これは男性・女性関係なく、漫画好きにはオススメしないといけないと思いました。

「男性向け」「女性向け」といったジャンルを越えて、単純に面白い作品を「漫画好き」の読者さんにをどうやって手にとってもらうか、改めて考えるきっかけになりました。

『となりのバカと続く嘘』あむぱか

「幼なじみの唾液を飲まないと死ぬ」という嘘をつき続ける女の子の物語。もともと同人誌で展開されていたが、現在は「まんがくらぶ」(竹書房)で連載中。単行本は2017年上半期に発売予定

塚本さん
幸せな、かわいい嘘から始まるラブコメです。いわゆる幼なじみラブコメなんですが、嘘をつき続けるために頑張るヒロインのいっぱいいっぱい感が読んでいて楽しいですね。

コミティアで出会った作品なんですが、やっぱり面白いからでしょうね、商業で連載が始まった時は嬉しかったです。正直、連載になってどうなるのかな? という不安も一瞬よぎったんですが、嬉しいことに毎号楽しく読ませていただいています。早くコミックスが出ないかな、と期待していると同時に、出たらたくさん売りたい作品です。

作者のあむぱか先生は、ちょうどこの間のティアズマガジン(創作同人誌展示即売会・コミティアのカタログ兼入場券)の表紙も描かれていたので、そこで初めて知った方もいると思いますが、ぜひ注目してほしい作家さんですね。

目指すは、『孤独のグルメ』的な本屋

COMIC ZIN秋葉原店1階の風景。レジ前のコーナーには今注目の作品が大々的に展開される

最後に塚本さんから、COMIC ZINの目指す書店の姿についてお話を伺った。

塚本さん
高野ひと深先生の『私の少年』を見た時、「面白いなあ」と思うと同時に「これは売れる!」と思ったんですが、BL出身であることを知って、改めて自分が不勉強なこの世界にはすごい作家さんがたくさんいると思ったものです。以前からヤマシタトモコ先生はじめ青年で活躍されている作家さんのBL作品も読んでいましたが、『私の少年』や「COMIC it」を読んだことでまた実感しましたね。

BLだけじゃなく、成年でもすごい作家さんはいますし、漫画の世界ってやっぱり広いんですよ。いまだにそう思うことが多いです。そうした知らない世界に読者のみなさんをどうナビゲートできるか。ネット書店は目的買いにはいいかもしれませんが、実店舗だからこそ知らない世界との出会いがあればと思っています。逆にそれがないなら来てもらう意味がないんじゃないかと。

これだけ発売される作品が増えてしまったせいか、目的の作品を買うだけでも大変な時代だと思うんです。だから当店に来てもらったお客様には「こっちの漫画も読むと、ちょっと幸せになれるかもしれませんよ」みたいなナビゲートができたら嬉しいですね。

『孤独のグルメ』で井之頭五郎が、「さて今日は何を食うかな?」ってフラッと店に入るじゃないですか。あんな感じに本を買ってもらえたら嬉しいです。『孤独のグルメ』的漫画の買い方。
うちもゴロ—ちゃんが「どれ?」と覗くような本屋にしたいです。

書店情報

書店名 COMIC ZIN 秋葉原店
営業時間 10:00 ~ 22:00 ( 月~金 )
※ 2Fは11:00 から、3Fは12:00 からになります。
10:00 ~ 22:00 ( 土日祝 )
電話番号 03-5298-5392
URL http://www.comiczin.jp
所在地 〒101-0021 東京都千代田区外神田1-11-7 高和秋葉原ビル

取材・撮影:yomina-hare編集部

今回の書店員

  • 塚本浩司

    「COMIC ZIN」商業誌部門責任者

    COMIC ZINで主に販売促進、企画や広報など担当しています。読者のみなさんに「知らない漫画だけど、読んでみたい」と思ってもらえるような様々な企画をこれからもやっていきたいです。
    ニコ生を通じた配信サイン会の定期開催が今年の目標です。