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書店インタビュー

「次に読む本」が見つかる本屋。 ヴィレッジヴァンガード下北沢店 中澤さんのおすすめ作品

籠生堅太

最狂の遊べる本屋へ

「遊べる本屋」ヴィレッジヴァンガード。本だけでなく、雑貨、CD、ファッションなどが縦横無尽に陳列された空間は、ひとことで言うならばカオス

「どこに何があるかわからない」店内は、検索性というものを投げ捨てているように感じるが、それを帳消しにするようなワクワクがある。初めて訪れた街を探検するような気持ちにさせてくれる。

そんなヴィレヴァンにおいて「最も狂ってるお店」と評されるのが、今回訪れた下北沢店
最も狂ったヴィレヴァンのコミック担当者は、最も狂った書店員かもしれない……。そんなことを考えながら、恐る恐るコミックご担当の中澤さんにお話を伺った。

コミック売り場担当の中澤さん。ワイルドなヒゲが似合うが、同僚からはオトメンと言われるほど恋愛漫画好き

中澤
うちは本が探しづらい店です(笑)。「これを買いに来た!」ってご来店いただくお客様には本当にむいていない。
それよりもパーッと寄ってもらって、目的なしに売り場をうろついてもらったら方が、きっと面白い本に出会ってもらえるかなって思います。

ヴィレッジヴァンガード下北沢店 中澤さんおすすめの作品

『まかろにスイッチ』川田大智

たった数ページの中に、驚きと笑いがつまったショートショート。メガネの着脱によりブスと美少女を往復する「メガ澤」の衝撃を味わってほしい

中澤
攻めに攻めてる実験的なギャグ漫画。
コマ割りだったり、ページをめくったときの見せ方だったり、漫画だからできることを全方向に攻めまくってます。絶対に実写化とかしないでほしい。

内容的にも攻めまくっていて、正直僕にはよくわからない作品もありました(笑)。
まだデビューしたての漫画家さんなのですが、ものすごく期待しています。

「シュール」って使われるうちに、だんだん「日本ならではのシュール」みたいな独特なものになってしまったと思うんです。何やってるのか理解できないけれど、なんだか面白い……みたいなものに。

でも『まかろにスイッチ』は、絶対にありえない、思いつかないような「超現実」っていう本当の意味でのシュールな作品だと思います。

『よろこびのうた』ウチヤマユージ

老老介護の末の無理心中。そう思われていた事件の背景には、ある事件が隠されいて……

中澤
人が死ぬ話は辛いけれど、どうか最後まで読んでほしい。
そして本を閉じたときに目に入る『よろこびのうた』というタイトルが、ものすごく心に刺さります。

最終的に主人公であるおじいさんは、認知症の奥さんといっしょに焼身自殺をしてしまうんですけれど、死を選んだ理由が、悲観的じゃなくて、どこか幸せそうにも見えるんですよね。自分が死ぬ準備をしてるのに、笑ってるんですよ。

日々パッと目にするニュースって、どうしてそんなことをしてしまったのか、共感する余地が全然なくって、現実味がないことがあります。
『よろこびのうた』は実際にあった事件をもとに、創作された漫画なんですけれど、こうやって漫画として描かれることで、どんな事件にも当然だけど関わっている人間がいて、一人ひとりの事情があるんだってことを突きつけられた気分です。

『あげくの果てのカノン』米代恭

メンヘラ女子と憧れだった先輩との不倫を描きつつ、エイリアンによって廃墟と化した東京など、世界観も気になるジャンル分け不可能な注目作。2巻は10月12日に発売したばかり!

中澤
メンヘラストーカー女が主人公なのに、キャラの気持ちがしっかり追えるのがすごい!

先輩の使った箸袋を盗んだり、会話を録音したり……そんなこと自分はやらないけれど、本当に好きになった相手にだったら、そういうことをしちゃうかもって思わせる説得力があるんです。

先輩が究極のイケメンであることもそうだし、異星人に侵略されていて、明日は死ぬかもしれない世界っていう設定だったり。
そういう恋愛だったり、SFだったり、別々の要素がケンカしないで、全部作品の面白さにつながってる。そういうボーダーレスなところが魅力です。

SFな世界観と、純愛こじらせてるところもあって「ゲスい『最終兵器彼女』」みたいですよね。

本を探しずらい本屋

中澤
接客中によくきかれるのが「〇〇社さんの本どこですか?」っていうことなんですれど、うちには出版社ごとの棚ってほとんどないんですよね。

そのかわり棚には一個一個名前をつけていて、たとえば「青春童貞棚」だったり、恋愛ものでも「大人のスレた女性」とか「アラサー系」とか細かく分けたり。そんな風に勝手なジャンルを作っています。

噂の「青春童貞棚」。手前が「青春」ゾーンで爽やかさ重視、奥は「童貞」ゾーンで、いろいろとこじらせた作品が並ぶ

それぞれ核になりそうな作品を決めて「これが好きな人は、きっとこれも好きだよな!」っていうのを勝手におすすめして作っていくのが、ヴィレッジヴァンガード……というか下北沢店ですね。
「この作家さんは、この作家さんから影響を受けた」なんて理由で作品を並べると、そこの棚の深みが増します。

だからやっぱり急いで本を買いに来ている人にはむかない。
ゆっくり見て回ってもらって「次に何を読むか」を見つけてもらうことを優先した売り場作りをしているので。

書店情報

書店名 ヴィレッジヴァンガード 下北沢店
営業時間 10:00~24:00
定休日 年中無休
電話番号 03-3460-6145
URL http://www.village-v.co.jp/shop/list/detail/?code=13
所在地 〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-10-15 マルシェ下北沢1F

取材・撮影:yomina-hare編集部
取材協力:ヴィレッジヴァンガード下北沢店

今回の書店員さん

  • 中澤孝紀

    ヴィレッジヴァンガード下北沢店 コミック担当

    2012年よりヴィレッジヴァンガード下北沢店に勤務。好きな漫画のジャンルは恋愛漫画。安野モヨコさん、ジョージ朝倉さん、河内遙さんなど、ちょっと大人な恋愛漫画を描く漫画家さんが好きです。