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作家インタビュー

『ゆとりやくざ』早坂啓吾インタビュー ゆとりへの憧れから生まれた、やくざVSゆとりの異色ギャグ

籠生堅太

ゆとりが、やくざの事務所に、就職したら

ゆとりの新卒が入社(?)したのは、まさかの暴力団という、一度読んだら忘れることのできない設定のショートギャグ『ゆとりやくざ』。

昔気質な任侠道に、一番相性悪そうなやつが入ってしまった……

「yomina-hare」では、単行本第1巻の発売に合わせて、著者の早坂啓吾(はやさか・けいご)氏と担当編集者の金成圭(キム・ソンギュ)氏にインタビューを刊行。なぜゆとりを主人公にしようと思ったのか。そして受賞から12年をへて、初の単行本刊行となった遅れてきたルーキー・早坂啓吾とは何者なのか。

ゆとりが活躍する作品を作りたかった

初受賞から12年。ようやくの初単行本を手にする早坂氏

まず『ゆとりやくざ』という作品のなりたちをお聞かせいただければと思います。

早坂
ゆとり教育世代の人たちって、世間的にはちょっと悪ものや笑いものにされているけど、自分は全然悪くないと思っていて。「むしろゆとりの人たちのほうが正しいこともあるだろ!」って。
それで、ゆとりが主人公の漫画を描こうと。

早坂先生ご自身は、ゆとり教育世代ではないんですよね。

早坂
1981年生まれで今37歳なので、ゆとりではないですね。

ゆとり教育世代よりも上の早坂先生の目には、彼らのどういったところが「むしろ正しい」というふうに映ったんですか。

早坂
合理的だし、柔軟な人が多いですよね。会社の電話をとらないとか、有休をすぐ使うとか言われるけれど、電話なんて手が空いてる人が取ればいいし、休みたいときには休んだらいいし。
今は働きながら漫画を描いてるんですけど、会社に行きたくないときもありますよ。

「むしろゆとりの人たちには、共感する部分も多い」と語る早坂氏

休みたいときは休め、と。

早坂
そうですね。だからゆとりを笑いものにするんじゃない、ゆとりが活躍するギャグを考えていて。

お話を聞いていると、ゆとりに対する「憧れ」みたいなものを感じます。

早坂
固定観念というか、「こうしたらああする」みたいなのが苦手なんですよね。そういうのにとらわれていないのは、いいなぁって。僕は中高とずっとサッカーをやっていたんですけれど、やっぱり上下関係が厳しくて。

体育会系の人たちって、ガチガチの上下関係があったりすると思うのですが。

早坂
ありましたね。練習してても、先輩とすれちがったら挨拶しなくちゃいけないとか。そういうのが本当に嫌いでしたね。

今はお仕事をしながら漫画を描かれているということですが、職場にはそういう人、それこそ武堂(ぶどう)さんみたいな人は。

過獣組の幹部・武堂さん。労働基準法から一番遠い場所で、今日も理不尽をふりかざす

早坂
まぁまぁまぁ……それは、いますよね。有休申請しても「なんで?」とか聞いてくる人。


マジすか! それはイヤですね……。

早坂
言わないですけどね、理由なんて。でもけっこういますね。ちょこちょこと。

作中の武堂さんの発言には、部活の思い出や会社での理不尽なことというのは……。

早坂
そこらへんは、結構参考にしていますね。

しかしなぜ舞台としてやくざの事務所を。

早坂
一般的な会社を舞台にすると、主人公の市後(いちご)がただの空気読めないやつになってしまいそうだったんですよね。だけどやくざのところだったら、それも許されるかなって。あとはやくざが常識的なことをツッコんでたら、それも面白そうだし。

やくざ相手にも一歩も引かないことで、市後のキャラクターも際立ちますしね。

早坂
ゆとり以前に、市後は変なやつなんですよね。感情をあまり表に出さないし。どこか無敵感のあるキャラクターにしたくって。

ちょっと悲壮感もありますよね。年金を気にしたり。

感情が希薄な市後が言うから耐えられるが、なかなかに切ないセリフ

早坂
年金とか医療費とかについては、自分も常々思っていることなので。ゆとりの人たちは、もっと思っているかもしれませんよね。

そんなゆとりで無敵な主人公・市後ですが、たまに武堂さんたちを助けてくれることも。

早坂
市後が、ただの変なやつにならないようには気をつけています。「ゆとりあるある」みたいなものが、武堂さんたちの助けになればと思っているので。

連載開始当初から比較すると、だいぶ市後と武堂さんは打ち解けている印象を受けました。

早坂
市後のおかげで、武堂さんたちは、今の感覚を取り入れられているんですよね。それに武堂さんも常識的なことを言っているようで、じつは市後とも張り合えるくらいの変な人で、どっちもどっちなんです。だからふたりが歩み寄って、平和なほうが面白いかなと。

「グランドジャンプ」の読者は、年齢的にも読者は武堂さんに感情移入していそうですよね。


読者層でいうと、だいたい30代後半から40代の男性ですね。会社でも役職に就かれている方もいらっしゃるでしょうから、それはあるかもしれません。意外と市後みたいなのが身近にいたりして、それもあって『ゆとりやくざ』を面白がってもらっているのかも。

早坂
読んで笑って楽しんでいただくのが一番だけれど、武堂さんが少しずつ変わっていったように、読者のゆとりへの接し方や考えが変わったら嬉しいですね。

NEXT デビューから12年。一度も諦めなかった

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写真撮影:yomina-hare編集部
©早坂啓吾/集英社

今回のゲスト

  • 早坂啓吾

    『ゆとりやくざ』著者

    1981年生まれ、長崎県出身。特技はフォークリフトの運転。
    2006年に「週刊少年ジャンプ」主催の漫画新人賞を受賞。
    現在は「グランドジャンプ」にて『ゆとりやくざ』を連載中。

  • 金成圭(キム・ソンギュ)

    集英社 キャラクタービジネス室

    2008年集英社入社。「週刊少年ジャンプ」編集部配属後、『HUNTER×HUNTER』『トリコ』などの作品を担当。2016年「グランドジャンプ」へ移動し、『ゆとりやくざ』を担当する。
    2018年6月よりキャラクタービジネス室勤務。