作家インタビュー
背川昇インタビュー後編 自分のための行動が、誰かの踏み出す力になる
一ノ瀬謹和
ずっと『キャッチャー・イン・ザ・ライム』で描きたかったこと
本日発売の「スピリッツ」でついに最終回を迎えた『キャッチャー・イン・ザ・ライム』(以下、『CITR』)。3週にわたってお届けしたインタビューもラスト。『CITR』で、背川昇氏は何を描こうとしたのか。連載当時の印象的なエピソードを振り返りつつ、胸のうちを語っていただいた。
背川昇インタビュー前編 幻の連載をへて、生み出された作品に託した想い
背川昇インタビュー中編 悩みに優劣はつけたくない。辛いことは、なんだって辛いから
ラップは全部、背川さんが考えてます
個人的に『CITR』を読んでいてビックリしたことといえば、なんといっても教科書の山月記に、ひたすら韻をふめる言葉を書き込んでるシーンです。質、量ともに圧巻でした。今はどのような体制で作品を作られているんですか?
ひとりだと聞かされると、驚いてしまいます。他の週刊連載をされている漫画家さんは、当然アシスタントさんがいらっしゃるわけですから。
やっぱりギリギリのラインで作られてるんですね。
だからといってネームができあがるわけでもなく……。
やっぱり金城さんからみても、あの回は特別だったんですか?
ラップの部分も背川先生がご自身で考えられているんですね。監修と言いつつ、ラップ部分はてっきり般若さんとR-指定さんが考えられているのかと。
そうなると、本当におふたりは、文字通り「監修」という感じですね。
『CITR』で表現されるラップは、ただ韻を踏むだけではなく、実際にリリック(歌詞)を口にしてみたときの「フリースタイルラップっぽさ」をかなり意識していますよね。1巻のおまけページでも、漫画という形態では表現し辛いアクセントを駆使したライミングなどにも注目しているなど、細かい部分にまで心配りがされており、ラップに対する愛情、敬意というものが感じられました。
そういえば、ちょっと前に、『CITR』のラジオCMで、声優の小倉唯(おぐら・ゆい)さんのラップが流れていたんですが、あれはどのような流れで制作されたんですか。
ということは、あのCMは背川さん、金城さん作、般若さん監修の作品とも言えますね。
どうでしたか、自分が考えたラップを声優さんがしゃべってるっていうのは。おそらく初めての経験だと思うんですが。
読者にも広がった連鎖反応
作品の話に戻りますが、いよいよ大詰めな印象を受けています。今、ウツギちゃんが、初恋の相手と再会するという話(※インタビュー時)の最中ですが。
本当にクライマックスですね。最終話のネームはは、もうかっちり決まっている?
じゃあ僕たちは、まだ最終章の片鱗も見れていないっていうことですね。クライマックスのここを見てほしいという部分はありますか?
すでに蓮の行動が皐月を変えて、皐月の行動がウツギちゃんの心を変えてみたいなところがありますね。
それは嬉しいですね! 皐月たちの行動が、読者に響いたっていうことですものね。最終回、楽しみにしています。2巻で完結ということですよね?
少し気は早いですが、単行本最終巻、あとは次回作も楽しみにしています! 本日はありがとうございました。
小学館
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©背川昇/小学館 週刊スピリッツ連載中
今回のゲスト
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背川昇
『キャッチャー・イン・ザ・ライム』著者
2017年7月より初連載『キャッチャー・イン・ザ・ライム』を連載開始。自主制作漫画展示即売会・コミティアにサークル「キセガワ上流」として参加。
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金城小百合
小学館「ビッグコミックスピリッツ」編集部
2006年、秋田書店に入社。「エレガンスイブ」編集部在籍中に『cocoon』『花のズボラ飯』などの立ち上げに携わる。2013年に小学館「スピリッツ」編集部へ。『あげくの果てのカノン』『プリンセスメゾン』などを担当。ファッション・カルチャー誌「Maybe!」の立ち上げにも参加、編集している。