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作家インタビュー

背川昇インタビュー後編 自分のための行動が、誰かの踏み出す力になる

一ノ瀬謹和

ずっと『キャッチャー・イン・ザ・ライム』で描きたかったこと

本日発売の「スピリッツ」でついに最終回を迎えた『キャッチャー・イン・ザ・ライム』(以下、『CITR』)。3週にわたってお届けしたインタビューもラスト。『CITR』で、背川昇氏は何を描こうとしたのか。連載当時の印象的なエピソードを振り返りつつ、胸のうちを語っていただいた。




背川昇インタビュー前編 幻の連載をへて、生み出された作品に託した想い




背川昇インタビュー中編 悩みに優劣はつけたくない。辛いことは、なんだって辛いから

ラップは全部、背川さんが考えてます

個人的に『CITR』を読んでいてビックリしたことといえば、なんといっても教科書の山月記に、ひたすら韻をふめる言葉を書き込んでるシーンです。質、量ともに圧巻でした。今はどのような体制で作品を作られているんですか?

教科書にびっしりと書き込まれたメモ。圧巻のひとこと

背川
基本的にはひとりで描いています。兄に少し手伝ってもらっていますが。

ひとりだと聞かされると、驚いてしまいます。他の週刊連載をされている漫画家さんは、当然アシスタントさんがいらっしゃるわけですから。

金城
山月記の回、すごい覚えてる。『CITR』は、毎週火曜日締め切りで原稿をやっていただいていて。でもこのとき、土曜になってもまだネームができていない状況で。

やっぱりギリギリのラインで作られてるんですね。

金城
これはもう落とすな、みたいな。でも落としちゃいけないから、私は気が急いてて、ほとんど怒って「それってどうなるの?」みたいなテンションで詰めてて。

だからといってネームができあがるわけでもなく……。

金城
山月記の書き込みについては、かなり早い段階から決まっていたんですが、その前後のネームが全然できていなくて。その状況下で、私が別の打ち合わせで何時間か返事ができないっていう瞬間が土曜日にあったんです。

背川
なので、そのあいだに山月記のページを進めてしまおうと思って。

金城
そうは言われても超気になって。別の人との打ち合わせの最中も、そのことが頭から離れなくて。打ち合わせが終わって、すぐに「背川さん今どんな感じ」って聞いたら、あの山月記のページがバン!って送られてきて。「めっちゃいいじゃん! 超できる気がする!」みたく勇気づけられたの覚えてます。

やっぱり金城さんからみても、あの回は特別だったんですか?

金城
すごく特別です。進行が厳しかったこともあるけれど、思ってたものの10倍とか100倍とかの書き込みの量だったので。それにネームが詰まって、間に合わないかもみたいなことはそれまでもあったんですけれど、やっぱり背川さん、ラップの部分を考えるの、めっちゃ早いなって。そこにもあらためてゾワってしましたね。

ラップの部分も背川先生がご自身で考えられているんですね。監修と言いつつ、ラップ部分はてっきり般若さんとR-指定さんが考えられているのかと。

金城
全部、背川さんが考えています。それを般若さんとかRさんにお見せして、長過ぎるとか多すぎるとか、逆にもっと長文にしたほうが面白いんじゃないかってアドバイスをもらっています。

そうなると、本当におふたりは、文字通り「監修」という感じですね。

金城
だからTwitterとかで「さすが般若さんとR指定さんの監修、韻がかたい」みたいな感想を見る度に、すごいニヤっとしちゃう。それは全部背川さんがやっているんだぞって。でも話の展開だったりキャラクターの造形みたいなことも般若さん、R-指定さんがアドバイスしてくれるので、おふたりには編集者の仕事もしてもらっています(笑)。

作品の反響を語る金城氏の声は明るい

『CITR』で表現されるラップは、ただ韻を踏むだけではなく、実際にリリック(歌詞)を口にしてみたときの「フリースタイルラップっぽさ」をかなり意識していますよね。1巻のおまけページでも、漫画という形態では表現し辛いアクセントを駆使したライミングなどにも注目しているなど、細かい部分にまで心配りがされており、ラップに対する愛情、敬意というものが感じられました。

そういえば、ちょっと前に、『CITR』のラジオCMで、声優の小倉唯(おぐら・ゆい)さんのラップが流れていたんですが、あれはどのような流れで制作されたんですか。

背川
あれは、もともとは僕が考えたラップですね。それをもうちょっと楽しくしてもらう感じに……。

金城
あのラジオCMは、すごくリッチな企画だったんです。背川さんが考えたものに、また私の方で足したり削ったりして。最終的に般若さんに送って韻を足したり減らしたり改善していただいたうえで、デモを作ってもらうという。

ということは、あのCMは背川さん、金城さん作、般若さん監修の作品とも言えますね。

金城
私や背川さんは韻を考えられるけど、曲は考えられないから、そこの部分は般若さんがやってくれました。めっちゃそれがかっこよくて! ただ般若さんのラップは、かなり早口で、これ小倉唯ちゃん無理では?ってなって。なので、デモテープを何分の一倍速にして、それに小倉さんに歌ってもらいました。収録には背川さんも立ち会って、その場でここは直したほうがいいとかのアドバイスをしてもらいました。

どうでしたか、自分が考えたラップを声優さんがしゃべってるっていうのは。おそらく初めての経験だと思うんですが。

背川
そうですね、相当嬉しかったです。

はじめての連載で、たくさんのことを経験された背川氏

読者にも広がった連鎖反応

作品の話に戻りますが、いよいよ大詰めな印象を受けています。今、ウツギちゃんが、初恋の相手と再会するという話(※インタビュー時)の最中ですが。

背川
そのエピソードが終わったあとに、最終章が始まる感じですね。

本当にクライマックスですね。最終話のネームはは、もうかっちり決まっている?

背川
これから最終話のネームをやるところです。

じゃあ僕たちは、まだ最終章の片鱗も見れていないっていうことですね。クライマックスのここを見てほしいという部分はありますか?

背川
クライマックスだけじゃないんですが、誰かのために行動するとかじゃなくて、自分のために起こした行動だったりとか、放った言葉だったりが、知らないうちに他の人に影響与えて、その人の行動もまた他の誰かにみたいな連鎖を描いていきたいって金城さんとずっと話しています。なので、最後までそれを描きたいなって。

すでに蓮の行動が皐月を変えて、皐月の行動がウツギちゃんの心を変えてみたいなところがありますね。

皐月のラップは、彼女自身を変えたけれど、ウツギが一歩踏み出す原動力にもなった

背川
単行本を読んで、皐月にすごい共感してくれた中3の男の子がTwitterにリプライくれて。「皐月にすごい共感して、自分も同じような青春を、ふさぎ込んだ青春を送ってきたから、高校からはもっとがんばれるようになるかもしれない」みたいなことを言ってくれて。それは、漫画家冥利につきましたね。

それは嬉しいですね! 皐月たちの行動が、読者に響いたっていうことですものね。最終回、楽しみにしています。2巻で完結ということですよね?

金城
そうですね。6月29日ごろの発売の第2集に最終回まで収録予定です。

少し気は早いですが、単行本最終巻、あとは次回作も楽しみにしています! 本日はありがとうございました。



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背川昇インタビュー前編 幻の連載をへて、生み出された作品に託した想い




背川昇インタビュー中編 悩みに優劣はつけたくない。辛いことは、なんだって辛いから

©背川昇/小学館 週刊スピリッツ連載中

今回のゲスト

  • 背川昇

    『キャッチャー・イン・ザ・ライム』著者

    2017年7月より初連載『キャッチャー・イン・ザ・ライム』を連載開始。自主制作漫画展示即売会・コミティアにサークル「キセガワ上流」として参加。

  • 金城小百合

    小学館「ビッグコミックスピリッツ」編集部

    2006年、秋田書店に入社。「エレガンスイブ」編集部在籍中に『cocoon』『花のズボラ飯』などの立ち上げに携わる。2013年に小学館「スピリッツ」編集部へ。『あげくの果てのカノン』『プリンセスメゾン』などを担当。ファッション・カルチャー誌「Maybe!」の立ち上げにも参加、編集している。