明日発売の新刊レビュー
冬梨。「せんぱいあい。」第4の欲求、それは先輩欲! かわいすぎる先輩をめぐる3人の女子の恋と友情
たまごまご
恋敵。でも大切なお友達
ふわふわしたおっとり気質の一年生・唯(ゆい)。
ちょっと暴走気味の一年生・美羽(みう)。
言動が怪しくなんかコワイ一年生・ももか。
3人とも、さおり先輩のことが、大々々好き。
……一点集中しすぎでしょう!?
明日、11月21日に単行本第1巻が発売される冬梨。氏『せんぱいあい。』は、柔らかな絵柄と色彩に一瞬惑わされるが、わりと変化球な「先輩大好き」ラブコメディだ。
4つめの欲求、先輩欲
おどおど系女子の唯。
入学時にドキドキ緊張していたところ、たまたま頭についていた桜の花びらを、さおり先輩が取ってくれた。一緒に居て安心できる人。自分のふわふわな髪の毛も、褒めてくれた。
彼女はたちまち、先輩に心惹かれるようになる。
美羽がはじめてさおり先輩を見た時、同学年のかわいい子だと思いこんでいた。
スキンシップしてくるさおり先輩に、何やら激しい興奮をしてしまい、目覚める。
以前からさおり先輩に目をつけていた、ももか。
ストーキングしていたところ、唯と美羽が先輩に急接近。メラメラと嫉妬を燃やす。
さおり先輩が何を考えているかは、一切出てこない。あくまでも先輩は「3人の憧れの人」として描かれている。
現時点では、「先輩」という概念に振り切っているのが面白い。
象徴的なのがこのセリフ。
「唯 人間には4つの欲求があるの」「食欲、睡眠欲、性欲、…そして先輩欲」
性欲とは別次元らしい。
作者が描きたいのは「性」ではなく、誰かに引かれる力だ。
だからタイトルは「せんぱい」「あい。」。
「あい。」は、「愛」かもしれないし、「出『会』った」「心が『合』った」「先輩と『I』(私)」かもしれない。
嫉妬の炎は燃ゆれど
美羽は変態気質なので、先輩のにおいをかいだり、頬を寄せてひっついたり。ほぼセクハラ。
あまりしゃべらないももか。唯や美羽が先輩と一緒にいると、ジト目でにらみをきかす。
唯は基本引っ込み思案。遠慮して一歩引いている。それどころか、ドキドキしすぎて逃げてしまうほど。
好きの形はバラバラだけど、情熱は3人とも強い。
実際ももかは序盤、かなりイライラを募らせ、威嚇オーラを放っていた。
ところが3人、意外にも衝突はない。
3人が一緒にいる時間に焦点を当て、次第に先輩が好きな3人の友情を、先輩への愛情と並行して表現するようシフトしているのが、うまい。
唯の、先輩に対して止められない想いが、物語の軸。
同時に、徐々にももかの心の揺れがクローズアップされていく。
先輩一筋だったももかに、2人の大事な友達ができた。最初は敵だったけど、今は敵じゃない。
唯「せんぱいとうまくお話ができなくて せんぱいの顔を見られなくて …逃げたくなっちゃう」
ももか「・・・・恋なんてそんなものだよ」
本来であれば、唯に塩を送る必要はない。けれどもももかは、唯のことも先輩のことも、どっちも大事になっていたのだ。
彼女の言葉を借りるなら「友情なんてそんなものだよ」。
切なさとギャグが、いい塩梅で均衡を保っている作品。
全員の中で道化になってバランスを保っている、美羽の存在が本当にいい。
みんなもっと大事にしてあげて。
©冬梨。