書店インタビュー
「次に読む本」が見つかる本屋。 ヴィレッジヴァンガード下北沢店 中澤さんのおすすめ作品
籠生堅太
最狂の遊べる本屋へ
「遊べる本屋」ヴィレッジヴァンガード。本だけでなく、雑貨、CD、ファッションなどが縦横無尽に陳列された空間は、ひとことで言うならばカオス。
「どこに何があるかわからない」店内は、検索性というものを投げ捨てているように感じるが、それを帳消しにするようなワクワクがある。初めて訪れた街を探検するような気持ちにさせてくれる。
そんなヴィレヴァンにおいて「最も狂ってるお店」と評されるのが、今回訪れた下北沢店。
最も狂ったヴィレヴァンのコミック担当者は、最も狂った書店員かもしれない……。そんなことを考えながら、恐る恐るコミックご担当の中澤さんにお話を伺った。
ヴィレッジヴァンガード下北沢店 中澤さんおすすめの作品
『まかろにスイッチ』川田大智
内容的にも攻めまくっていて、正直僕にはよくわからない作品もありました(笑)。
まだデビューしたての漫画家さんなのですが、ものすごく期待しています。
「シュール」って使われるうちに、だんだん「日本ならではのシュール」みたいな独特なものになってしまったと思うんです。何やってるのか理解できないけれど、なんだか面白い……みたいなものに。
でも『まかろにスイッチ』は、絶対にありえない、思いつかないような「超現実」っていう本当の意味でのシュールな作品だと思います。
『よろこびのうた』ウチヤマユージ
最終的に主人公であるおじいさんは、認知症の奥さんといっしょに焼身自殺をしてしまうんですけれど、死を選んだ理由が、悲観的じゃなくて、どこか幸せそうにも見えるんですよね。自分が死ぬ準備をしてるのに、笑ってるんですよ。
日々パッと目にするニュースって、どうしてそんなことをしてしまったのか、共感する余地が全然なくって、現実味がないことがあります。
『よろこびのうた』は実際にあった事件をもとに、創作された漫画なんですけれど、こうやって漫画として描かれることで、どんな事件にも当然だけど関わっている人間がいて、一人ひとりの事情があるんだってことを突きつけられた気分です。
『あげくの果てのカノン』米代恭
先輩の使った箸袋を盗んだり、会話を録音したり……そんなこと自分はやらないけれど、本当に好きになった相手にだったら、そういうことをしちゃうかもって思わせる説得力があるんです。
先輩が究極のイケメンであることもそうだし、異星人に侵略されていて、明日は死ぬかもしれない世界っていう設定だったり。
そういう恋愛だったり、SFだったり、別々の要素がケンカしないで、全部作品の面白さにつながってる。そういうボーダーレスなところが魅力です。
SFな世界観と、純愛こじらせてるところもあって「ゲスい『最終兵器彼女』」みたいですよね。
本を探しずらい本屋
そのかわり棚には一個一個名前をつけていて、たとえば「青春童貞棚」だったり、恋愛ものでも「大人のスレた女性」とか「アラサー系」とか細かく分けたり。そんな風に勝手なジャンルを作っています。
それぞれ核になりそうな作品を決めて「これが好きな人は、きっとこれも好きだよな!」っていうのを勝手におすすめして作っていくのが、ヴィレッジヴァンガード……というか下北沢店ですね。
「この作家さんは、この作家さんから影響を受けた」なんて理由で作品を並べると、そこの棚の深みが増します。
だからやっぱり急いで本を買いに来ている人にはむかない。
ゆっくり見て回ってもらって「次に何を読むか」を見つけてもらうことを優先した売り場作りをしているので。
書店情報
書店名 | ヴィレッジヴァンガード 下北沢店 |
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営業時間 | 10:00~24:00 |
定休日 | 年中無休 |
電話番号 | 03-3460-6145 |
URL | http://www.village-v.co.jp/shop/list/detail/?code=13 |
所在地 |
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-10-15 マルシェ下北沢1F |
取材・撮影:yomina-hare編集部
取材協力:ヴィレッジヴァンガード下北沢店
今回の書店員さん
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中澤孝紀
ヴィレッジヴァンガード下北沢店 コミック担当
2012年よりヴィレッジヴァンガード下北沢店に勤務。好きな漫画のジャンルは恋愛漫画。安野モヨコさん、ジョージ朝倉さん、河内遙さんなど、ちょっと大人な恋愛漫画を描く漫画家さんが好きです。