明日発売の新刊レビュー
『古見さんは、コミュ症です。』オダトモヒト “コミュ症”美人女子高生が友達づくりのため奮闘
川俣綾加
コミュニケーションなんて言葉がこんなにも生活の中に溶け込んだのは、いつからだろうか。小学生の頃は「コミュニケーション」という言葉自体を知らなかったかもしれない。
確か、それを意識し始めたのは中学や高校に入ってからだ。
コミュ症だって、友達ほしい
「コミュニケーション」を意識し始めたのは、思春期は人との距離感や己の感情、さまざまなものと向き合っていく時期だからだろう。
第1巻が明日、9月16日に発売となるオダトモヒト『古見さんは、コミュ症です。』は、ちょうどその時期のもどかしくも愛おしい“コミュ症”の女子高生・古見硝子(こみ・しょうこ)と、平凡なクラスメイト・只野仁人(ただの・ひとひと)を中心に描いたスクールコメディだ。
白い肌に切れ長の目、つるつるの黒髪で入学早々に人気者となった古見さん。頭脳明晰で一言もしゃべらず、常人とは一線を画した崇高な存在として一目おかれている……が、実は人付き合い(コミュニケーション)がとても苦手な重度の“コミュ症”。人と話そうとすると携帯電話のバイブ機能のようにブルブル震えてしまう。
でも本当は、古見さんだって友達が欲しい。おしゃべりもしたい。「どうやって話しかけよう」「つまらないって言われたらどうしよう」、たくさんの「どうしよう」が渦巻いて踏み出せないだけなのだ。
只野は平々凡々な男子高校生だが、人の気持ちを察する力に長けていた。古見さんの隣の席になったことがきっかけで古見さんが、本当は人としゃべりたいのだと気づく。
会って2、3分で誰とでも友達になれるコミュ力モンスター・長名なじみですら距離を置いてしまう古見さん。「友達を100人作る」を目標に、友達づくりを始めるが……。
ありのままを受け入れてくれる優しさ
『古見さんは、コミュ症です。』は、とても愛おしい物語だ。この愛おしさはどこから来るか? コミュ症な古見さんの奮闘か。
それ以上に、友達を作ろうと努力する古見さんのありのままを受け入れる周囲の人々にある。
たとえ大きな前進はなかっとしても、本人が「変わりたい」と思い行動した瞬間から、着実に変化は起き始めている。
古見さんが饒舌におしゃべりする日はまだまだ遠いかもしれないが、その努力と、“コミュ症な古見さん”が受け入れられる様子こそが愛おしさの根源だ。
100%理想の自分になれなくってもいい。そのための行動と、結果が描かれている。
小学館 (2016-09-16)
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©オダトモヒト/小学館 週刊少年サンデー