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作家インタビュー

『剥き出しの白鳥』鳩胸つるんインタビュー 「『ToLOVEる』よりも裸」から白鳥くんは生まれた

籠生堅太

一度、闇に葬られた作品だった

ここまでの伺ったお話だと、反響も大きく、もともと単巻予定だったものが、続刊になったりと、かなり順調なように感じますが、なにかトラブルは。

鳩胸
じつは『剥き出しの白鳥』は、一度、闇に葬られた作品だったんですよ。

読み切り版の扉ページ。鳩胸氏「今見ると突き刺さりそうなアゴしてますね」

玉田
「ジャンプSQ.CROWN」という増刊号に読み切り版を掲載して、アンケートの結果もよかったんです。けれど、なかなか連載にまでこぎつけることができなくて。

それはやはり月刊誌で短いページ数のギャグは難しいということだったんでしょうか。

玉田
確かに、難しさは感じていたのですが……。それよりも「ギャグ漫画は、10人読んで10人好きよりも2、3人がすごく好きくらいの方がいい」とよく言うのですが、「SQ.」編集部が当時8人いて、偉い人にウケればよかったんでしょうけれども、僕にしかウケなかったという(笑)。それで「SQ.」では、別の企画を進めることになって。

鳩胸
そこからは、ひたすらネタを続ける日々でしたね。結局「ジャンプSQ.」では、5、6回没をくらってるんですよ。どれも玉田さんにだけはウケてたんですけれど。

それだけ没がつづくと不安になるんじゃ。

鳩胸
そりゃ当然不安ですよ。地球上で玉田さんにしかウケてないんじゃないかって。でもやっぱり笑ってもらえると、それだけで救われるんですね。

短い時間のインタビューだったが、ふたりが信頼しあう様子は伝わってきました

玉田
そんなうちに僕が「少年ジャンプ+」に異動することになって。週刊連載が可能な漫画アプリなら、ギャグをやるには合っているだろうということで、鳩胸さんにも「ジャンプSQ.」から「ジャンプ+」に移ってもらって、封印していた『剥き出しの白鳥』を引っ張り出してきたわけです。

作品の成り立ちであったり、絵柄を変えようという提案だったり、作品を、作家を信じているからこそできる提案ですよね。

鳩胸
僕も玉田さんのことは信頼しています。そこは100%です。だって笑ってくれるから。僕、玉田さんとしか漫画を作ったことがないんです。初めてついてもらった担当さんが玉田さんで、ついていけば間違いないって信じてました。

「SQ.」では、なかなか連載にまでたどりつかなった『剥き出しの白鳥』ですが、「ジャンプ+」では連載をもぎ取れたんですね。

玉田
「少年ジャンプ+」の編集会議では、誰かひとりが強く推すっていうのが大切で。それはその作品が強く突き刺さる人間がいるっていう証明なので。あとはやはり紙の雑誌と異なりページの制限がないので、面白いものは、とにかくやってみようっていう空気もあって。

「少年ジャンプ+」は今、澤井啓夫先生、うすた京介先生、漫☆画太郎先生、小山ゆうじろう先生とギャグ作家さんが多数参加されてますよね。

鳩胸
そうした方たちといっしょに掲載できるのはありがたいですね。

玉田
じつは僕は1回も『剥き出しの白鳥』をギャグ漫画とは言っていなくて。

「彼は天才だと信じてる」と何度も繰り返す玉田氏。言葉にも熱がこもる

鳩胸
え、こっちはガッツリ笑わせにいってるんですけれど。

玉田
白鳥くんが持っている感情って、じつはすごく少年漫画的で。夢を追い求めているんですよ、千麗館(せいれんかん)高校で高みを! グランドラインで海賊王は目指せないけど、学校ならば、空を目指せる……。ちょっと何言ってるかわからないですね……。

少年漫画的というのはわかります。単行本には収録されていないですけれど、連載ではこの後に白鳥くんと白鳥くんのお父さんの戦いが繰り広げられるわけですから。「父親を超える」というのは、じつに少年漫画的ですよね。

玉田
そういう少年漫画っぽいところと少女漫画っぽいところ、その両方を取り入れていきたいですね。そうしているうちに誰も見たことのないものを作ってくれるはずだと思ってます。僕は彼が天才だって信じ切っているので。

そうやって作られた作品の反響がすぐに伝わってくるのも、作品をアプリやWEBで配信するメリットですよね。毎回たくさんのコメントがついていると思うのですが、チェックされたりしますか。

鳩胸
最初は見ないようにしてたんですよ、怖いから。でも最近、全部見てます。めちゃくちゃ見てます。

もうファンレターみたいなもんですもんね。

玉田
なかにはコメントで「つらいことあったけど、これで笑えたからよかったよ」みたいなこと言ってくれる人もいて。

鳩胸
あー、一番いい。めちゃくちゃ嬉しいですね。でも「センター試験失敗したけど、どうでもいいや」っていうコメントには「いや、よくねえぞ!」ってこっちがツッコミましたね。

玉田
昨日ちらっとみたら「鳩胸先生のお父さんを知ってる」って人がいて。しかもお父さんが脱いでるシーンに。

父・天馬との戦いは「ジャンプ+」編集長も思わず「ヤバい……」と漏らしたとか。単行本第2巻に収録予定

鳩胸
あれ怖いっすね、誰なんだろう。

お父様も「自分の息子は漫画描いてる」って宣伝してくださってるんじゃ。

鳩胸
「連載が始まるよ」って報告はして。ただ露出狂の漫画だから人には薦めないほうがいいよって言ったんですけど、きっと宣伝してくれてる……。それによって、うちの父親の株が下がってないかちょっと心配で。

でも単行本のカバーも下品というよりはむしろ美しいので手に取りやすいし、お父様も安心して薦められるんじゃ。

玉田氏「『もっと脱がせろ』という意見もあったんですが、脱ぐことよりカッコよさを見せたかったんです」

鳩胸
中身、露出狂ですけどね。

玉田
手に取りやすいっていうのは、すごく意識しましたね。欲しいけど、レジに持って行きづらいっていう苦しみは僕も経験しているので。鳩胸先生もすごく頑張ってくれて。カバーの白鳥くん、これまでで一番のイケメンに描いてくださったので。

いよいよ初単行本が発売されますね。(編集部註・インタビューは単行本発売以前に行われました)

鳩胸
いや、そわそわしてます。本当に書店に並ぶのかなって疑いも、まだちょっとありますよ。

玉田
それは誰もが通る道で、置いてあったら置いてあったで売れてないのかなって心配になるし、なければないで売場に置いてくれてないんじゃないかって不安になる。必ずそう思うから。

鳩胸
あとこのインタビューすら仕込みなんじゃないかって疑ってます。

安心してください。載せますから(笑)。

鳩胸
でも最初は感動したいですね。「うわー、俺の本が置いてある!」って。7年ごしですからね。

7年っていうのは、玉田さんが担当につかれてから。

玉田
そうですね、2011年からの付き合いなので。『剥き出しの白鳥』自体が3年ごしの企画ですし、グッとくるものがあると思います。彼以外にも頑張っている新人さんたくさんいるので、早くその喜びを味わってほしいなって思います。

それでは最後に今のお気持ちを。

鳩胸
「少年ジャンプ+」には感謝しかないですね。一回は闇に葬られた企画を連載させてくれる懐のでかさ。しかも1巻で終わるって話だったのに、続けさせてくれるなんて。
なにより読者の方たちですよ、こんなに読んでくれて、たくさんのコメントをくれて。本当に励まされています。ありがとうございます!



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©鳩胸つるん/集英社
写真撮影:yomina-hare編集部

今回のゲスト

  • 鳩胸つるん

    『剥き出しの白鳥』著者

    愛知県出身、千葉県在住。2015年「ジャンプSQ.」で 読切『剥き出しの白鳥』を発表し、好評を博す。
    2017年12月漫画誌アプリ「少年ジャンプ+」にて『剥き出しの白鳥』連載開始。

  • 玉田純一

    集英社「少年ジャンプ+」編集部

    「ジャンプSQ.」編集部をへて、2017年より「少年ジャンプ+」編集部に所属。
    担当作は『剥き出しの白鳥』『スギナミ討伐公務員』『生者の行進』『見えっぱりシンドローム』『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所 魔属魔具師編』(今春開始予定)他多数。