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書店インタビュー

街の本屋は情報発信地。 かもめブックス 井出さんおすすめの作品

籠生堅太

一見カフェのような佇まい。書店とは知らずに入店してくるお客様もいらっしゃるそう。
神楽坂にあるかもめブックス。その店の奥には、けっして広くはないが、心ひかれるコミック売り場がある。

出版社、デザイン事務所などの業界関係者も多いこの街のコミック担当者さんおすすめの新人が知りたい。

校正会社が手掛ける“街の本屋さん” かもめブックス

かもめブックスを運営しているのは、神楽坂で校正校閲を専門とする会社・鴎来堂(おうらいどう)。実はかもめブックスがある場所には、もともと別の書店があったのだが、2014年に閉店。
“街の本屋”が次々となくなっていく状況を見て、かもめブックスのオープンを決意したとのこと。

カフェとギャラリーが併設され、おしゃれな雰囲気の漂うかもめブックスだが、目指しているのはあくまで“街の本屋”。レシピ本や料理本なども多く取り揃え、地域の暮らしに密着している。

また校正校閲社である鴎来堂が運営するだけあって文章についての本も多く取り揃えられている。

そんな“街の本屋さん”かもめブックスのコミック売り場はどのようになっているのだろうか。コミックご担当の井出さんにお話を伺ってみた。

かもめブックスでコミックを担当する井出さん。「当店は30代、40代の女性のお客様が多いので、往年の名作少女漫画が定期的に動きます。見知らぬタイトルを冒険的に買っていかれるのは、男性ですね」

井出
コミックは、話題の本+αのラインナップでやっています。
お店の雰囲気にあわせて、アート系の作品ばかりそろえても、普段使いしてくれるお店にはならないと思うので、話題作も置くようにしています。

とはいえ、それだけだと、やはり後手後手にまわってしまいます。本は注文してから2週間くらいしないと入荷してこないものなんですよ。それに本屋さんって情報発信地だと思っているので、やっぱり「何この本知らない」って本も置いて、お客様を裏切りたいですね。もちろんいい意味で。

かもめブックス 井出さんおすすめの作品

『アフターアワーズ』 西尾雄太

不思議なお姉さん・ケイ。クラブでの彼女との出会いから、エミの世界はどんどん広がっていく。夜の街のきらめき、朝日のまぶしさ、すべてが輝くガール・ミーツ・ガールストーリー

井出
私、これひたすら感心して読んでるんですよ。

『アフターアワーズ』は、実在する場所や実在する小物がしっかりと描かれていて、「この風景見たことある」や「これ知ってる」っていう発見があるんですよね。その作りこみに感心しながら読んでる。

男女問わず漫画好きって、クラブにいって、ヒャッハー! なタイプの人、そこまでいないと思うんですよ。
けどクラブに行ったことがなくても、クラブに興味がなくても、この作品は楽しそうに思えるんですよね。

それと百合だけど、すごく開けてる。百合って興味ない人は興味ないジャンルだし、舞台も学園だったり、閉鎖的なイメージがあったんです。けどこの作品は、クラブのなかで友達もどんどん増えていくし、2人きりの世界にとじこまって、人の輪を断つようなことはしていない。

『107号室通信』カシワイ

全ページカラーで描かれる、見たことはない、けれど懐かしさを感じる物語。著者のカシワイ氏は、本作が初単行本

井出
私的に今、リイド社がめっちゃ熱い。

かもめブックスのお客様には、手に取ってもらいづらいかと思っていた田中圭一さんの『Gのサムライ』も、発売初日からすごく売れました。
『Gのサムライ』から『107号室通信』みたいな寓話的なお話まで、「トーチ」は連載作の幅がすごい。

編集部の方たちにも度々御世話になっているのですが、あの人たちノリが部活なんですよ。だからなんでもできるんだろうなって。
WEBで無料で読めるのに、紙媒体で持っておきたい本を作るのがすごい。

『107号室通信』は、カラーリングの絶妙さがすばらしくて。
カシワイさんって青がベースにあることが多いので、たとえば「水色とこの色って合うんだ」みたいな色の発見がありますね。
ネイルを塗る時の参考にしたいくらい。

これはカラーの本で持っておきたいです。

『ラプンツェルと5人の王子〜恋するグリム童話〜』箱知子

『ラプンツェル』『カエルの王子』など誰もが触れたことのあるお話を、オリジナルストーリーも交えて、ひとつのストーリーにまとめあげている。知っているのに、初めて読む……そんな不思議なストーリー

井出
『ラプンツェル』『雪の女王』につづいて、今月末にシーリズ第三弾の『シンデレラと5つの魔法』が発売する箱知子さん。

グリム童話やアンデルセンって、誰もがが知っているけれど、曖昧に記憶してることも多いじゃないですか。
むしろ今、きちんと読んでみたいっていう気持ちもあって、大胆なアレンジだったり、意外な解釈がされているわけじゃないけど、元ネタに少しの少女漫画らしさを追加してきちんと読ませてくるんですよね。

私、新書館がすごく好きなんですよ。新書館には私の中二が詰まってます(笑)。
新書館さんから出てくる新人さんって、本当に注目したい人ばかりなんですよね。

イケメン俺様なキラキラした王子様が、だんだんと恥ずかしくなってきた人、王子よりもむしろ姫の心情を読みたいっていう人には、箱さんの作品の雰囲気がすごくハマると思います。

おすすめしたい本は、いっぱいある

実は今回紹介した3作品以外にも、東田基氏のデビュー単行本『イケメン共よメシを喰え』や、こちらも初単行本となる鬼才・内田実氏の『さよならの生涯』などなど、たくさんのコミックを紹介いただいた。

出版社が違っても、同じジャンルや似たテーマの作品ならば並べて陳列されているかもめブックスのコミック売り場。思いがけない作品に出会える楽しみがある

長い書店員生活、そのすべてをコミック売り場で過ごした井出さんのチョイスだけあって、どの作品も魅力なものばかりだった。
おかげで取材から戻るとき、鞄のなかは、単行本でパンパンになってしまったほどだ。

神楽坂という落ち着いたエリアに佇むかもめブックス。散策のついで、井出さんのセレクトが光るコミック売り場を覗いてみてはいかがだろうか。

書店情報

書店名 かもめブックス
営業時間 月~土 10:00~22:00
日・祝 11:00~20:00
定休日 不定休
電話番号 03-5228-5490
URL http://kamomebooks.jp
所在地 〒162-0805 東京都新宿区矢来町123 第一矢来ビル1階

取材・撮影:yomina-hare編集部
取材協力:かもめブックス

今回の書店員さん

  • 井出麻悠美

    かもめブックス コミック担当

    ヴィレッジヴァンガード、ジュンク堂、ブックファーストと数々の書店をコミック担当として渡り歩く。2014年に開業したかもめブックスにはオープニングスタッフとして参加。
    最近の驚きは、深夜のソフト・オン・デマンド直営書店で見かけた成年向けコミックのジャンルの細かさ。ロリとロリババァは違うものなんですね……。