新連載レビュー
三ツ橋快人『RYOKO』制服少女に日本刀、戦う相手は巨大な……食べもの!?
根本和佳
セールもオマケも宅配もない、命がけの食料調達!
「少年サンデー」の月例新人漫画賞「新世代サンデー賞」史上初の大賞受賞者・三ツ橋快人氏による新連載『RYOKO』が、先週発売の「週刊少年サンデー」47号から始まった。本日発売の48号には第2話が掲載されている。
演出のメリハリが光る剣戟アクション、調理開始
食材が巨大化し、意思を持って人間を襲うようになった時代。
数少ない人間の生き残りである料子は、今日も野菜スープを作るためにじゃがいもと戦い、ニンジンを狩る。
父と弟との食卓を守るため、犠牲となった母のため、壊れた世界で狩りを続ける……食うか、食われるかだ。
料子は人間のいない町を縦横無尽に飛び回り、アクロバティックに彼らを切り刻んでいく。大胆な構図と、描き文字を含めたスピードあふれる演出、それに「止め絵」のうまさが光る。
見得を切るときに“カカン”と響く、つっかけの音が心地いい。粗削りであることも魅力となって、「画面を拡張される感覚」をもたらしてくれる。
料子はある日、猛牛であり牛肉でもあり、母親の仇である「黒毛A5和牛」と対峙する。どこか愛らしい野菜たちとは格が違う強敵に、苦戦のすえ勝利を収める料子。今夜は念願のハンバーグだ。
そして第2話では、北にあるという安全な土地「グリーンゾーン」の存在を師匠から知らされるのだが……
三白眼かわいい少女の幸せを願わずにいられない
人のいなくなった町に漂う重苦しさと、不釣り合いなほど明るく晴れた空。
薬剤で巨大化した生物を食べている以上、何かしら心身への影響があるのではないか……そんな“現代的な不安”も感じさせる。
この世界の秘密は、まだまだあるはずだ。
料理上手なのに包丁さばきが殺意たっぷりの料子。恋する相手もろくにいない料子。三白眼かわいい料子。おそらくまだ中学生の彼女には、食後に寝落ちてしまうような幸せを味わってほしくもある。
家族のために刀を振るい続ける料子に、安寧の食卓は待っているのか。
©三ツ橋快人/小学館