まとめ
今週の注目初単行本(2017.11.19〜11.25)
yomina-hare編集部
今週発売された初単行本3選
今週、初めての単行本を発売し、漫画業界という大海原で更なる一歩を踏みだした新人漫画家がいる。
そんな記念すべき初単行本中から、「yomina-hare」的に大注目の作品を3つご紹介!
なんでもないはずだった週末に、新しい作品、新しい漫画家との出会いをプラスしよう。
『慈母れ!ヒイラギちゃん』ヤツタガナクト
KADOKAWA / メディアファクトリー
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サイコサンタ娘、慈母を目指す
窓をぶち破り、手製の市松人形(呪いつき)をプレゼント。ゲームは脳が溶けるので破壊する。
そんなサイコなサンタ娘・ヒイラギちゃんが人類の慈母(グレートマザー)を目指す非日常コメディ『慈母れ!ヒイラギちゃん』(ヤツタガナクト氏)の単行本第1巻が11月22日に発売された。
ヒイラギちゃんは、何も破壊を楽しんでるいるわけでも、子どもが悲しむ姿が三度の飯より好きなわけではない。本当に心の底から人類の未来を憂いている尊い存在だ。
だから文具を配り、子どもに「学びこそ子どもの幸福!」なんてサムいセリフを大真面目に言ったりする。完璧に頭のネジが2、3本イッちゃっている。
これでヒイラギちゃんが優秀だったら、ちょっとしたホラーなのだけど、天は二物を与えなかった。ヒイラギちゃん、超ポンコツです。なので毎回、何かしら悪事を企むけれど、失敗して泣いたり悔しがったり。そんな姿を眺めていると、なぜか愛しく思えてくる。
自分勝手で、性悪最悪で、迷惑ばかりかけるけど、嫌いになれない。そんな不思議な魅力がつまった一冊だ。
『元女神のブログ』本間実
元女神でも、母の悩みは変わらない
「モーニング」の月例新人賞「モーニングゼロ」佳作を受賞。その後、子育て情報サイト「ベビモフ」で連載スタートとなったのが、本間実(ほんま・みのり)氏の『元女神のブログ』。その単行本第1巻が、11月22日「いい夫婦の日」に発売された。
元女神、元人魚、子どもを産んで不死でなくなった吸血鬼など、元人外の母親たちの育児を描いたストーリー。
人外というフィルターは通しているけれど、母ではなかった自分を思い出したり、復職を悩んだり、仕事を続ける友人と価値観がズレていったり……描かれるのは母親なら誰しも感じるような育児の悩みだ。
復職を考える吸血鬼の母・木穴(きけつ)さんは、ある夢を見る。
1歳になったばかりの息子のタイ君が「僕の血を吸っちゃ嫌だよ」「自分の飢えを満たすために 僕を犠牲にするんでしょう?」と語りかけてくる。吸血鬼ならではのエピソードだけれど、自分の幸せと子どもの幸せを秤にかけるような選択は、誰の身にも起こることだ。
描かれる悩みが、本当に身近なもので、育児経験者ならば思わず頷いてしまうようなことばかり。育児の楽しさ、辛さだけでなく、働く同世代を見て湧き上がる嫉妬といった暗い感情も拾い上げる丁寧さが心に残る。
現役ママだけでなく、いつか母になる女性、そしていつか父になる男性も必読です!
『我らコンタクティ』森田るい
青春に早いも遅いもない! 大人の青春ロケット開発
2013年、『マキと渡とすげぇキモチ悪い虫』(原作・前田迎氏)で「アフタヌーン」主催の漫画新人賞「四季賞」で四季大賞を受賞した森田るい氏。その後も同誌にて読み切りを発表していた森田氏の初連載が『我らコンタクティ』だ。
ストレスフルな生活を送るOL・カナエは、小学校の同級生・カズキと再会する。
カズキはカナエに、ひとりで太陽系外を目指すロケット開発をしていることを打ち明ける。その目的は、宇宙人に映画を観せることとは!?
純粋に宇宙を目指すカズキとは裏腹に、金儲けを企むカナエ。しかしいつしかカナエもロケット開発に夢中に。そんなふたりのロケット開発は、やがては周囲の人々も巻き込みはじめる。
全1巻という短いボリュームのながら、町工場でのロケット開発の様子を描くエピソードと、ロケット発射をめぐる国家権力とのかけひきの二部構成で読み応えは抜群。
ロケット開発そのものよりも、それに打ちこむ人々の姿が印象的だ。人が聞けば笑ってしまうような馬鹿馬鹿しい目標に向かって、大の大人が笑ったり、泣いたり、ときには国家権力とケンカしたりは、まさに大人の文化祭といった感じ。